クルマづくりサポート

クルマづくりサポート#5【設計開発フェーズ】

クルマづくりサポート#4で部品選定と設計について少し触れましたが、前さばきが出来た時点で設計開発フェーズに入ります。

このフェーズのポイントは
・企画を実現する設計をやりきれるのか
・設計した部品が安定的に手に入るのか
・販売価格(原価)は市場競争力を有するか
・工場毎の生産要件を満たす設計ができるか
です。

つまり、クルマの企画だけでは設計を進めることは出来ません。

どの部品を使うのか、どの工場で作るつもりなのか、原価をいくらに抑えなければならないのか、などの条件が揃わずに企画だけで設計を進めると部品が買えない、依頼する工場で作れない、原価が販売価格を超えてしまう、などの問題が出てきます。

開発と量産を外部に委託する場合、莫大な開発費がかかりますがこれらの課題の多くは解決できます。ただし委託先選定を見誤ると委託先でこの課題に悩むことになります。受託開発、受託量産の経験と実績を持つ会社は日本には非常に少なく、新規取引先からフレキシブルに受託する事例も非常に少ないと思います。世界に目を向けると多くの実績を持つ海外企業が数社あり、設立10年程度の比較的新しい企業も生まれており、選択の幅が広がります。

原価について書きます。

自分たちで設計を進める場合、歴史と経験のある大手OEMと違って初めてクルマづくりに取り組む企業の原価見込みは非常に雑になります。これは致し方ないことです。自動車部品購入のサプライチェーンが無く、一般に販売されない部品のために価格感覚も乏しい。そんな環境で精度の高い原価算出はほぼ不可能です。

開発に直接関わらない周りの人々からは「製造原価を把握してないなんて、ビジネスの基本がわかってない」と言われますが(笑)、初めてのクルマづくりの原価算出は、周りの人が考えるより何十倍も難しい活動です。正確な原価が算出できたのなら、それはプロジェクトの最終コーナー付近に差し掛かったことを意味します。

では、設計開発フェーズの原価算出をどう進めるか?

それは、設計を進めながら必要な部品を選定していき、その部品が適正価格で買えるようにサプライチェーン構築に奔走し、ひとつずつ購入部品の原価を積み上げていく。このような地道な活動を進めながら精度を上げていくしかありません。設計、サプライチェーン構築、原価算出は同時進行でコツコツと進めていきます。そこに近道はありません。

信頼性・品質というブランドを構築し、大手OEMと渡り合ってきた実績のある自動車部品メーカー様に対して「お金はあるから売ってくれ」と言って簡単に買えるものではありません。新規でクルマづくりにチャレンジする企業と自動車部品メーカー様との関係は、大手OEMと部品メーカーのそれと異なり、完全なる「売り手主導」です。この関係を理解しておかないと、思った以上に部品購入の道は険しくなります。

次回はサプライチェーン構築について書こうと思います。