クルマづくりサポート

クルマづくりサポート#6【分岐点2:サプライチェーン構築】 

私が経験した0からのクルマづくりで、最も苦しんだのがサプライチェーン構築です。ここが一番難しい分岐点だったと痛感しています。逆の見方をすると、この苦しみを乗り越えてサプライチェーン構築が出来れば、かなりのアドバンテージを得たことになります。

ご存じのとおり、クルマは様々な部品を購入し搭載して初めて完成します。その部品が全然買えない。

クルマを完成させるにはどんな部品が必要で、その部品はどのメーカーのものかはOEM出身なのである程度知っているつもりですが、それらのメーカーにホームページから問い合わせても回答がなく、電話をしてもすぐに切られたり、たらい回しにされてしまい結局返信がもらえない。

自動車部品メーカー様にとってお客様は大手OEMがほとんどで、OEM以外からの問い合わせを想定していないのは当たり前です。そこに、どこのどんな会社かわからない人から突然電話があり「部品を売って下さい」と言われても、対応に困るだけです。

その後、何とかして営業担当や技術担当の方まで繋がっても「御社に部品を売って、もし事故でも起きて弊社の信用にキズがつくと困る。取引できません。」と言われる。日本で新規にクルマを開発するということはこういった参入障壁があるのだと痛感します。

でも、こんなことでくじけていてはクルマづくりは出来ません。
大事なことは
・ドブ板活動で一軒ずつ部品メーカー様にアタック
・話を聞いてもらえるなら、自分たちのクルマづくりの情熱や想いを伝え続ける
・自分たちのやろうとしていることを、現場に来て見てもらって乗ってもらってご理解いただく
・自分たちの設計の考え方をしっかり説明し、品質に対してきちんと考えていることをご理解いただく
・自分たちの活動に賛同していただく、つまり応援してもらえる存在になること
です。

もっとスマートにクールにできる方法があれば教えて欲しいですが、私はこれが一番の近道だと思っています。

部品メーカー様の立場から見ると、よくわからない会社に自社の部品を売ることはリスクばかりでメリットがほぼありません。
「この会社に売って、そのクルマで事故が多発しないのか」
「不具合の原因が自社製品に降りかかりブランドが失墜しないか」
「そんな危ない会社に部品を売った責任を問われないか」
こんな不安が頭をよぎります。

海外のニュースで、OEM側の設計ミスと思われるリコールを部品メーカーの納入品のせいにして一方的に発表した海外メーカーの事例を見たことがあります。そのような心配を担当者がされることは当然だと思います。

営業担当者のその心配をどうやって払拭できるのか?

それは愚直にクルマづくりを実行していること、品質に対して真面目に取り組んでいることをきちんと理解していただくことだと思います。会社としての信用、設計者としての信頼を得られるかどうかが、部品を売って良いかどうかの大きな判断基準のひとつだと思います。性能や不具合に直接影響しない汎用品はその対象ではありません。走る曲がる止まるの性能や大きな不具合に関わる重要保安部品が主な該当部品です。

サプライチェーンと書くと上から目線な感じもありますが、取引先様との信頼関係を築き、Win-Winとなるような良好な関係を作ることが最も大切なことです。また、海外は日本よりも部品販売に対して寛容です。物流費やコミュニケーションの課題はありますが海外取引先を開拓するのも一案です。

クルマに必要なすべての部品を購入するルートを確保しない限り、量産というゴールには到達しませんが、仕入先開拓の苦しさに負けて購入しやすい部品を採用したために、保安基準適合しなかったり、不具合が多発したりして、大きく手戻りしたり会社の信用を失うこともあります。

サプライチェーン構築という分岐点での判断を誤らないことがクルマづくりには非常に重要です。