クルマづくりサポート

クルマづくりサポート#11【分岐点4:試作・評価】 

過去のクルマづくりでは、試作車を作ったタイミングが大きな転機になりました。

『クルマづくりは難しい』『お前らには無理だ』と周りの方々から言われ続けましたが、完成度30点でも試作車が出来るとそのチームがどこまで本気でクルマづくりを考えているのか、今はクルマづくりの何合目にいるのか、がチームにも周りにも伝わりやすくなります。

「とりあえず走るクルマを作るのでは近道になりません」と#10で書いたものの、やりたいことを30点でも形にすることはクルマづくりの活動を推進する大きな転機になります。作るんか作らんのかどっちやねん!と突っ込みが入りそうですが、サプライチェーン構築や部品選定に行き詰まったのなら、試作車によって停滞した空気を打破するキッカケになり得ます。

自身の経験では、まさに30点だった外装もない見た目も悪い試作車がキッカケで、仲間が増えたり、部品メーカーの担当者さんが気にかけてくださるようになったり、「お前らには無理だ」と言われる機会が減りました。30点でもクルマを実際に試作してみると思っていたよりも良かった点に気づいたり、意識していなかった抜け漏れを発見したりと気づきも多く、そのタイミングで試作車製作を進めて(結果的に)良かったと思えました。

「とりあえず走ればなんでもOK」では次に繋がりませんが、「今考えたものをできる範囲で形にして、どんなもんか確認してみよう」は非常に良い活動だと思います。一発目の試作をいつ実施するのかは重要な分岐点になります。

一方で試作車製作はお金と工数がかかります。思いつきで何度も作ることは、時間と予算に余裕がないと結構厳しいです。

クルマづくりスタートから量産までの間に何回試作車を作ることができるのか。もし5回作れるのなら、その回数分だけ車両の完成度は上げていけると思います。しかしそんな潤沢な時間・工数・予算が無いのが一般的です。経験上、試作は2~3回がいっぱいいっぱいだと思います。仮に3回としてもその大事な1回を「走ればなんでもOK」に使ってしまったら、開発が苦しくなることは想像しやすいと思います。

試作車を製作したら、次にその試作車の初期評価を行います。しかし、当然ながらナンバープレートはつけられないので公道を走るわけにはいきません。私有地、テストコース、サーキットなどナンバープレートが必要のない環境でしか走行が出来ません。このテスト環境を見つけるのに苦労します。

潤沢に開発費があれば、日本にある名だたる国際サーキットを占有して時速300kmでのテスト走行なども出来ますが、市街地走行での操縦性・視認性・NVHなどはサーキット環境では評価しづらい。また、耐久強度評価で走行距離何千kmでどの部品からどんな壊れ方をするのかなどは専用の評価路や評価基準が必要になります。大手OEMでは当たり前に行ってきた評価が、場所や基準がないために進められません。

過去に経験したクルマづくりでは、広い駐車場や滑走路の跡地をお借りしたり、営業前の自動車教習所を早朝にお借りするなど、無料や安く借りられる場所をとにかく探して、飛び込みでお願いしに行って、お借りできることになれば積載車を運転して試作車を持ち込んでテストを繰り返していました。開発の終盤には、ミニサーキットや大きなサーキット、国交省管轄の公的なテストコースなどを利用していました。

また、実車を使わない評価もたくさんあります。スレッド試験や衝撃試験、くりかえし入力に対する耐久性評価、システム評価、高電圧保護試験、難燃性試験など。ここでは書ききれない程多くの試験や評価が必要です。

どの試験をどこで実施すれば良いか、どこでなら試験出来るのか、大手OEMでは悩むことのないこれらの壁も乗り越える必要があります。