私は過去のクルマづくりで、プロジェクトの第一歩目で派手につまずいたことがあります。
それは、チームとして「何のためにやるのか?」というクルマづくりの目的が曖昧だったこと、
それに加えて自身の認識不足や理解不足が原因で、プロジェクト初期の段階で
「既存車改造をベースに進めるのか?」「0からフルスクラッチで進めるのか」
どちらで進めるのかの選択を誤り、1年近く経ってから振り出しに戻る羽目になりました。
その苦い経験から、社内外多くのメンバーでクルマづくりという険しい山登りをするためには、
関係者全員が目的をしっかり認識しベクトルを合わせることが非常に重要だと痛感しました。
「何のためにやるのか?」
これはクルマづくりにチャレンジする際に一番最初にはっきり決めておかなければなりません。
堅苦しい表現をすると「ビジネスの狙いと目的の明確化」です。
要するに、どんなビジネスモデルで収益を上げるのか、をはっきりしておかなければなりません。
クルマづくりにチャレンジするたくさんの会社様からご相談いただきますが、
「何のためにやるのか?」がはっきりしていないケースが意外と多いです。
・「一度車を作ってみたい」という夢、願望なのか
・実は車作りがしたいのではなく、車を使ったサービスがしたいのか
・車両の量産・販売で利益を上げる、いわゆる自動車メーカー(OEM)になりたいのか
・たとえ開発で大赤字になったとしても車両開発に参入し、既存事業とのシナジーやPR効果を狙いたいのか
など、一番根っこにある「何のためにやるのか?=目的」をはっきりさせないと、その後のクルマづくりの方向が大きく変わります。
目的がはっきりしないと、0からの自動車開発をするべきなのか、既存車改造でよかったのか、
単に量産車を買ってくるだけでよかったのか、さえ決められずに、第一の分岐点から間違った方向に進んでしまい、
ゴールに届かなくなる可能性が高まります。振り返ると、私の失敗もここが原因だったと思います。
目的がはっきりすれば
・どんな車を作り、その車で何をするのか
・それは新規開発か、または既存のベース車を改良するのか
・誰が開発し、どこで量産するのか
・赤字で良いのか、黒字じゃないとダメなのか
が決めやすくなります。それぞれの選択肢もご紹介しやすくなります。
目的の明確化を含めた車両開発の前半1/3程度を、私は「前さばき」と呼んでいます。
次回は、クルマづくりに一番重要と言える前さばきについて書こうと思います。